日本歌曲を勉強しようと思い立ち、さてどんな作曲家がいて、どんな曲を作ったのかを調べようとしたら、市販の楽譜以外にそうした資料はなく、資料作りから始めなければならなかった。 そこでまず、音楽図書館に行って作曲家のリストを作り、それを戦前・戦後に分けた。 とりあえずは、昭和以前生まれの作曲家100人ほどを選び出し、その代表する曲約200曲を練習してみた。 このCDには、その内60人142曲を収録した。 自宅で歌の指導をするとき、曲の歌唱指導のために、いろいろな歌い手のCDを聞き比べることが多い。 しかしそのほとんどが、声楽的に上手に歌っているだけで、以外にも言葉の表現は乏しく、表現を学ぶための歌唱見本にならないものが多い。 外国の歌(イタリア歌曲やドイツ歌曲)では比較的表現が出来ているのに、日本歌曲ではなぜ出来ないのかという疑問から、それならいっそのこと、自分で日本語をきちんと表現した教材を作ってみようと思った。 そのため、比較的簡単な歌を多く取り入れ、CDの内容は「日本抒情歌曲、なつメロ・ポピュラー、外国の歌」の三つに分けた。 しかしCDを作るにあたって、大きな問題があった。 それは、以前に私が合唱の指導をしていたとき、声帯をつぶしてしまい、現在歌える音域は狭くて1オクターブちょっとしかないこと、声が疲れやすくてすぐ出なくなってしまうことだ。 そのため、選曲と、多くの曲を自分の音域に合わせるための移調に半年も費やした。 録音に際しては、予算の都合上専門家には頼まず、自分でポータブル録音デッキを担いで、ピアニストと二人で行った。 録音時間も一回3時間半という中で、準備、後片付けも含め、CD1枚分約20曲を録音するという、ハイスピードで行わなければならなかった。 録音の失敗もあり、結局は1年余りの期間に13回行い222曲を録音した。 このCDを聞くにあたってのお願い。 録音技師がいなく、マイクも1本で録音したため、音量や、歌とピアノのバランスが幾分違うものがあること、私の音域が狭いため低い声が多少聞きづらいところがある、ということをご了承ください。 CDでは原則として歌詞は全部歌うこととし、歌わない部分は解説に記載した。 ピアノの伴奏部分については、市販の楽譜とは多少違う部分がある。 |
【楽譜について】(06年2月) 歌う、または伴奏するにあたっての注意点が書き込まれています。 移調・編曲のために書き下ろしたものは、オリジナル譜も掲載しています。 一部において、実際の演奏と異なるものがあります。 既存の譜面に、オリジナル譜を書き足したものもあります。 楽譜が2種類あるものは、2つを組み合わせて演奏しています。 補足 【歌詞と解説について】(05年11月) 読みにくく、統一性のない文章は、おそらく紙面上の制約で生じたものもあるかと思います。 しかし、その文章の構成の意図がわからないものも多いため、父が作った解説書の原文を、ほぼそのまま転載しました。ご了承ください。 これらの詩や詞と解説を読みつづけていると、父は、故郷のこと、昔の思い出、両親のこと、他どんなことを思って編纂、または歌っていたのだろうかと考えさせられ、ときには涙ぐむことさえありました。 補足 【CDリマスターにあたって】(05年6月) 父は、声、楽器といった音を、音楽知識をもとに聞く「耳」はもっていましたが、オーディオとして聞く「耳」はあまり持ち合わせていなく、1本のマイクで採録するための技術は皆無でした。 それでも、MDの音は悪いと感じ、ピークレベルにあまり神経質にならないで録音ができる、カセットテープを採用したのは正解でした。 そして、伴奏者はさぞかし大変であったことと思います。 曲によっては、歌とのバランスを取るために、音が鳴らないくらい弱く弾いているものもあります。 録音してしまったものを、後からエフェクト処理してもどうにもならないものが多かったです。 録音した時点での機器の接触不良ノイズ、マイクノイズ、テープヒスノイズがあり、今時点では、それはどうしようもないと思いました。 そのような状態にめげず、録音日による音の違い、さらに曲ごとの音の違いを確認しながら、左右のバランスの調整、イコライザーによる調整をし、リマスター作業を行いました。 とても手のかかる作業であり、全曲をCDからリッピングし、データを加工するのに丸5日かかり、これを一から、テープからダビングし、曲間で切り、フェードイン・アウトを作り、曲間を作り、曲ごとの音量のバランスを取るまで、しかも父からの無理難題に答えながら、私以上の労力を費やし、約1年かけて製作していただいた、父の後輩(sawara氏)には頭が下がります。(sawara氏については別ページでも触れます) とりあえずは、聞きやすいCDにリマスターできました。 本当は、録音したときの機器で再生し、音の雰囲気に合ったコードを選び、プロ用のオーディオカードにつなげて、テープ起こしからリマスター作業すれば、もっとクリアな音が作れたでしょう。 しかし、楽譜の整理もまだ残っており、亡くなってからあっという間に2年が過ぎ、まだ父のことを忘れられないうちに、父の仲間に楽譜の整理を手伝っていただきたいし、音楽に携わり残した、あらゆるデータをPCに取り込みたいし、CDにそれほど手をかけていられません。 そして、30年くらい昔のオープンリールテープ起こしがまだ残っています。 録音して30年後にリマスターするのなら、今回のCDの完全リマスタは、30年後にするとしようか? 収録の最後の時期は、父の声に艶がなく、かすれて、声が出にくくなっているのを感じました。 誰かへの手紙で、声が出ないと書いてありましたが、もうこの頃からそうだったのか? この頃から、病気の前兆は出ていたのかもしれません。 | ||||||||||||
エフェクトのコンプレッサーを使うことに抵抗がありましたが、 聞きやすくするため、オートコンプを使用しました。(スレッショルド-15dB) |