第十二節 無無明 亦無無明尽 乃至 無老死 亦無老死尽

引き続いて空の説明である。

無無明とは、無明が無いこと。無明とは「十二因縁」、または「十二縁起」ともいうなかの一つであり、すべての煩悩の根本であるともいい、真理や本質をはっきり理解できない状態をいう。

この他の十一つは、<2>行―からだとことばと心でする行為、三業という <3>識―五蘊の識と同じ <4>名色―認識の対象となる六境のこと <5>六処―六根のこと <6>触―接触のこと <7>受―五蘊の受と同じ <8>愛―欲求、愛着、執着のこと <9>取―取捨選択する実際の行動のこと <10>有―存在すること <11>生―生きること <12>老死―生の後にさまざまな苦が起こることを示し、一切の苦悩を老・死の二事で代表させている。

この十二の因縁は、無明から老死までの一つ一つが因果となっている。無明があるから行があり、行があるから識がある、と老死まで因果することを順観という。こんどは逆に見て、無明が無ければ行は無く、行が無ければ識も無い、と老死まで因果することを逆観という。

まさしくこれは空の思想である。因縁があるから「果」が起こるのであるから、その因縁がなければ「果」は起きない。固有でなく実体がないもの。だからといって無明や行などが存在しないわけではないのだ。それが空である。ここの経は「無無明 及玉 無老死 無無明尽 及至 無老死尽」と並びかえたほうが分かりやすい。

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