きょうだいには違いがあり、育て方も違う


「同じように育てたつもりなのに、どうしてこの子だけが病気になってしまったのでしょう」ということはよくあることです。子どもがSOSを出すとき、それがお父さんやお母さんの育て方にばかり問題があったとは断言できません。育て方に問題があったとすれば、きょうだいみな同じようにSOSを出すはずなのにそうとは限らないからです。このことは、子どもが持って生まれた感じ方に違いがあるからだということを示しています。

M君は頭の後ろのほうに丸いはげができてしまいました。皮膚科を受診したところ円形脱毛症と診断されました。その原因にストレスが多いと聞いて、お父さんやお母さんはびっくりしてしまいました。すぐにはストレスになりそうなものが思い浮かばなかったからです。お父さんやお母さんは、M君とお姉さんは同じように育てたつもりなのにどうしてM君だけがこんなことになったのかと悩んでいます。お姉さんは部屋のかたづけも勉強もあまり好きではありません。自分からやろうとするよりは、「やりなさい!」と言われてからやりはじめます。最近は、強いはげましや激励が意欲を刺激したのか、成績も少し伸びて勉強にも意欲的になってきています。しかしM君は叱られると、それがちょっと気になるのか落ち込んでしまうことがあります。それに自分のぺースでやらないと万事納得できない性格です。もうすぐ中学だからとちょっと厳しくなった両親の叱咤激励は、彼にとって毛が抜けるほどのストレスになっていたのです。お姉さんには「○○しなさい」が合っていたのかもしれないのですが、M君には「自分でやってみなさい」と動き出すまで待つ対応が必要だったのです。

きょうだいを同じように叱っているつもりなのに、切り替えが上手な子がいるかと思うと、いつまでも気にしてしまう子がいたりします。上の子はこの叱り方が効果的だったけれど、弟にはかえって傷つける結果になってしまうことだってあるということを知っていると、子どもの持って生まれたものを客観的に見抜くゆとりが生まれますから、大切なキーポイントを逃さずに済みます。

子どもが持って生まれたものはいっしょなのに、あえて期待するものが異なるために性格や行動が景響を受けることもあります。一卵性双生児は遺伝的にはまったく同じものを受け継いで生まれてきます ところが一卵生双生児であっても「この子が長男の○夫で、こっちが次男の△夫よ」とあえて、お兄ちゃんと弟に役割を設定することがあります。不思議なことにお兄ちゃんということになった子はいつの間にか典型的な長男的性格、比較的慎重でむちゃはしない子になり、弟と設定された子はやんちゃないたずらっこで、お兄ちゃんを頼っていたりすることがあります。

遺伝的には同一なのに、周囲が期待するものの違いによって、子どもの性格が影響を受けているのです。顔も身体つきも区別が付きにくいほどよく似ていたのに、やがて表情や顔つきにだんだん差が出てくることもあります。年齢を経ていくうちに、明らかに別の顔へ変化していくことも珍しくありません。一人の人間が別の人生を歩むとどうなるのかを示しているようで、生まれたときの無限の可能性をどう生きるかで容貌まで変わっていくことを知るのです。このことは言い換えると、生まれたときに持ち合わせたものを親の育て方や、それに影響を受けた生き方によって人生が変わってしまうこともあるということでつくづく考えさせられてしまいます。

子どもが必要としているものに答えようとする柔軟な感性を身に付けることも親の役割なのかもしれません。ときにはいさぎよく
「これまでのお母さんのやりかたは、ちょっとあなたに合わなかったみたい・・・・・・」
これからはあなたに合ったやり方を探すからねと子どもに伝えられる、そんなお母さんやお父さんはすごいと思っています。
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