思春期の攻撃性


思春期特有の攻撃性の問題もあります。思春期に特に男子は男性ホルモンの分泌が活発になり、急激に身体が大きくなるのも手伝って、活動性や攻撃性が高まります。「攻撃性」ということばを使うと、暴カやいじめを連想してよいイメージを持たないかもしれませんが、発達心理学的に言えば、それは成長に向かうエネルギーのひとつの表現形態として見ることもできます。

困難にぶつかりながらも、それに負けずに克服し乗り越えていく試み、人生を積極的に切り開いていく姿勢のなかには、よい意味での攻撃性の発揮が見られます。人間が成長、発達していくということは、ある意味では自分が自由にできる世界を広げていくことです。抑圧や制限を打破して自由を獲得していく意味での攻撃性は大切なものです。

思春期には自我の目覚めに伴う自己主張や自立欲求と結びついて、こうした意味での攻撃性が高まります。彼らはこうした攻撃性を親にぶつけながら、親離れをしていきます。それはしばしば親に対する反抗的な言動になって表れます。たとえば「放っとけ!」「うるさい!」「関係ないやろ!」「ババア!」などのきついことばは、親からの独立戦争を始めた子どもがしばしば親にぶつける鉄砲玉です。ところがその攻撃性が競争と管理の圧力、「よい子」への囲い込みのなかで封じ込められる状況が深く広がっているように見えます。

そして封じ込められた攻撃性が出口を失って内攻し、弱いものいじめや衝動的な暴カ、自己破壊といった破壊的な攻撃性に姿を変えて噴出してきていることも無視できません。
子どもの心ヘ戻る