彼氏彼女の事情 ACT1

<ここでの登場人物>
宮沢雪野と有馬総一郎が、高校に入学した4月からのお話しです。
雪野には、月野・花野という妹がいます。

(宮沢)
私は 人の目に どう映るのだろうか
  「宮沢さんってすごいよね 頭いいし 性格いいし かわいいし
   優等生ぶったとこぜんぜんないし あこがれちゃう
   こんな人もいるんだなぁ・・・って思うよ」
やはり・・・・・ 人の目にはそう映ってしまうのか・・・・・
群衆より抜きん出た者 あこがれの対象として・・・・・
私は そんな自分がとても好きだ

『上品なワタシ』はただのソトズラ!
性格いいなんて大ウソ!!
ほんとは私は 誰より人に尊敬されたり アコガレたれたり 特別扱いされたり
ちやほらされたり 一番をとるのが大好きなだけの―――
『見栄っぱり』なのです・・・・・

でもこの学校に入学して以来 私はイライラしている
なぜなら・・・・・
  「有馬くんといい 本当にうちの級長は二人ともスゴイよね―――っ
   あッ 有馬くん!
   私 あの人と同じクラスになれてよかった―――っ」
「―――こいつだ! 有馬総一郎!! 奴に負けるわけにはいかないのよっっ」

この調子で中学まではうまく世間をだまくらしてきた私なのだが 
はじめて敵が現れたのである
「私のステキさを皆に気付かせなければならないの!!
 しかもさ〜 そいつ 性格も運動神経もよくって〜
 大病院の院長のひとり息子なんだってさ〜っ
 ・・・・・ムカつく!
 もう二度と! 奴に一番なんか取らせはしないっ」

いままでは 皆の注目を集めるのも 先生に信頼されるのも 私の役割だったのに 
「くっそ〜 あいつさえいなきゃ ほっといても私が注目されたのに!
 寒い! 寒いんですよ! 一般市民として 埋没しているのがッ
 みんなにほめられたい 認められたい かまわれたい〜ッ」

私は なにかにとりつかれたよーに勉強していた
なんとなく 一番とって注目されたい・・・ というよりは
”有馬に勝ちたい”に少しずつ変化しているような気がしたが・・・・・
負けたやつは どんな顔をするかしら?
そして・・・・・

  順位 氏名   総合点
  1  宮沢雪野   697
  2  有馬総一郎 691
  〜

  「わあ! すごい宮沢さん やっぱりすごいんだね―――っ
   おめでとう!
   有馬もすごいって思ったけど 宮沢さんもやるなあ
   いままで気付かなかったよ」

やっ・・・ やった!!
久しぶりだなぁ・・・ この称賛のひびき・・・・・ ああっ きもちいい・・・・・
有馬に勝った―――っ!
宮沢雪野 高校デビュー!

(有馬)「ああ 宮沢さん」

(宮沢)
くくく・・・ どうだ 有馬
もうあんたの天下じゃないのよ

(有馬)「やっぱり宮沢さんはすごいや」

(宮沢)
え? まてよ なんだそのリアクションは
こんなの予想してなかったぞ
私は 有馬を抜きさえすれば 奴に勝てるのかと・・・・・
なんだろう 勝ったのにうれしくないぞ
・・・・・っていうよりは 考えればわかったのに
成績や見栄にこだわっていたのは 私ひとりで
有馬はもとからそんなものにかまってはいなかった
勝とうなんて下心がなくても 人に認められてた だから・・・・・
あの人は ホンモノなんだ・・・・・
恥ずかしい
そのホンモノと あまりに違う自分が
こういう私が さもいい人にふるまって皆をだましてきたっていうのは
『偽善』っていうんじゃないか?

自分を 実際以上にみせかけたって 疲れただけで
自分と違う生き物になろうとするなんてバカなのだ
「有馬と顔合わせたくないな―――」

どん!
宮沢と有馬 ぶつかる

(宮沢)
逃げるんだ!!
わたしゃ負け犬なんじゃ
誰もいない廊下 逃げる雪野 追う有馬

(有馬)「待って! 覚えててね 僕は宮沢さんを好きだから」

雪野の家
(花野)「で どうしたの?」
(雪野)「え? 断っちゃったよ 本性バレたらやだもん
 やつは さびしい目をして去っていったよ」
(花野)「・・・・・いいの? お姉ちゃん その人のこと『きらい』だったの?
 わたし お姉ちゃんがその人にコンプレックスあるからかと思ってたの
 お姉ちゃん 『コンプレックス』っていうのはさ 裏返せば 
 ”自分が絶対なりえないものに対するアコガレ” なんじゃないのかな」

(宮沢)
・・・・・あれ?
たしかに あの頭のよさ 感じのよさそうな 誰からも好かれる性格とかって
あれは・・・・・
いつも自分が近づこうとしていたイメージにちかいな・・・・・
というより 理想のイメージ ―――ぴったり・・・・・

「あ―――ッ しまった―――ッ!!
 そうか・・・・・ よく考えるといい男なんじゃないか・・・・・
 私 そーゆーふーに見たこと一度もなかったからさ・・・・・
 うう・・・・・ 早まったことを・・・・・」

休日 雪野以外の家族みんなで映画に出かけることに・・・
(宮沢)「傘もってったほーがいいよぉ 午後からくずれるってさ―――」

『ピンポーン』
(宮沢)「月野だな やっぱり傘 忘れたんだ はいはいは――いっ
 うりゃ―――っ ホラ 忘れもんだよーんっ」
中学ジャージを着た雪野 傘を片手に 相手の溝うちに足蹴りしたあと
その相手が有馬であることに気付く

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