彼氏彼女の事情 ACT57
(つばさ)
わたしはずっと待っている
この暗がりから 連れ出してくれる誰か
4th ALBUM 4月中旬 発売
こういうのを見ても つらくはなくなった
(雪野)「へえ もうアルバム出るんだ 春にツアーやるもんね
つばさちゃん 『陰陽』の歌 聞こえるようになった?」
(つばさ)「ううん 何の音もしない」
(つばさ)
3学期に入り 体調も回復し 毎日ふつうにやっています
一馬ちゃんとは あれから会っていない
「きみを愛しているんだ」
一馬ちゃんに急にそう言われて 戸惑う
今まで望んでも わたしは選ばれることがなかったから
一馬ちゃんを というよりも
わたし 「恋愛」を好きになれない
―――つらいから
わたしの中には「部屋」がある
心は ずっとその中にいるんだと思う そこにいれば寂しくないし 傷つくこともないから
このごろ分かってきたけど パパや有馬くんを好きだったのは
二人の中にも この「部屋」があったからだ
受け入れて欲しかった
でも二人は 他の人を選び 扉を開けて行ってしまった
苦しくて もうずっと ここで眠ろうと思った
そんなとき 一馬ちゃんが現れた
一馬ちゃんの中にも「部屋」はあったのだけど
そこは はてしなく広い
わたしは はじめて 受け入れられて そこでなら自由になれた
一馬ちゃんの心には 自由の羽がついていて
いつまでも老いることなく 少年のままだ
だから「きょうだい」のまま ずっと幸福な二人の世界にいられるんだって思ってた
でも
「恋愛」は やっとみつけた「きょうだい」まで奪ってしまった
いつも わたしの望みは砕かれる
今さら降ってきたって
怖い もう「恋愛」を信じるのは
優しさが 触れたところから伝わってくる
きっと このままじゃ枯れちゃう
水をもらえない花のように
あの人は わたしのただの「きょうだい]だったのかしら
水 酸素 光 風 緑
この世界のきれいなもの全て
(雪野)「つーばさちゃん! 珍しい 何聞いてるの」
(つばさ)「『陰陽』」
(雪野)「ええ!? 聞こえるようになったの!?」
(つばさ)「全然。」
(雪野)「・・・・・・ はい?」
(つばさ)「一馬ちゃんみたいな人が どーいう歌歌うのか このごろ すごく気になって
聞こえてたときのことを思い出そうとしても どーもはっきりしなくて・・・」
(雪野)「でも 前向きになるのはいいことだよ」
(つばさ)「ね 一馬ちゃんの歌ってどんなふう?」
(雪野)「一馬くんそのものって感じだよ
あの人は極上の魂を持ってるんだねえ
ふだんは照れて隠してるたくさんの想いが 解放されて
その色とりどりの感情の波が 聞く人の心をさらうんだよ」
(つばさ)
いつか 一馬ちゃんの歌を聞きたいな
そう素直に思うのは すごく気分がいい
前はそんなこと考えようともしなかったけど
なぜだろう 前ほど淋しくない
離れてても 一馬ちゃんのことを思うと胸に明かりが灯る
でも どうして れんらくくれないんだろ
芝姫 つばさ様
一馬からの手紙が届く
『陰陽』のライブチケットが入っていた
(つばさ)「スゴイ!! 武道館でライブするんだっ わぁ アリーナ 一列目中央だ!!
一馬ちゃんったら そこで仲なおりするつもりだったのねっ」
チケットとともに入っていたCD
タイトル 「翼」
(つばさ)
自分のことだなんて 思ったりしないけど
大丈夫
CDをかける
聞こえてくる 一馬の歌
(つばさ)
一馬ちゃん どうして今まで 聞こうとしなかったんだろう
心を閉じて
一馬ちゃんは いつも こんなにそばにいた
♪ |
数え切れないほどの夜を一人窓辺で過ごしてきたわ 傍らで歌を聞かせてくれる人が現れるのを待ちながら 数え切れないほどの夢を心に深く秘めていたわ 暗闇に沈んでいた愛。 でもある日あなたが現れた 波に揉まれ、漂いながら生きてきた私 でもやっと安らぎの時がきたのね ひとりきりになることはもう二度とない 私の人生に明かりを灯してくれるあなた 未来への希望をくれるあなた 私の毎日に光を運んできて そして夜を歌で満たしてくれるのね わたしの人生に明かりを灯してくれるあなた こんな確かな気持ち間違っているはずないわ あなたはわたしの心に明かりを灯してくれるのだから |