彼氏彼女の事情 ACT61

図書館で勉強している二人
(宮沢)「それにしても総一郎さん 難題をすらすら解くわねぇ
 ね 小さい頃から かしこかった? IQ はかったことある?」
(有馬)「いくつか知らないけど・・・ 先生達がすごく驚いてたような・・・
 幼稚園の時なんだけど その頃はもう今の両親に引き取られてて
 ずいぶんいいとこに通わせてもらってたんだ
 で はかったら良かったらしく 両親の所にいろんな私立小学校からさそいが来て
 すご――く有名な学校に無試験で入れた
 ははは 昔はかなり お坊ちゃんだったでしょ
 それまでずっといじめられてて 友達なんていなかった
 でも それ以来 先生達から大事にされて 友達もできた
 僕が勉強好きなのって単に 面白いからっていうだけじゃないんだろうな
 でもその小学校で ―――――
 僕には 同い年のいとこが3人いるんだけど
 事あるごとにいじめられて それでうんざりして転校しちゃった
 これって”逃げ”かもしれないけど
 僕には近所の公立って合ってるな― 宮沢にも会えたし 宮沢?」
血相を変えて
(宮沢)「ってか 貴様アァ なんでやり返さない!!? アタシなら血だるまにする!!!
 ブルジョワの子せがれどもに やられてんじゃないわよッッ
 私 そんな話はじめて聞くよ
 そんな話を 平気な顔で言えるまで 黙っていないでよ
 いやな事だって 有馬のことなら 私には全部大事だよ」
顔を見つめ合わせて
(有馬)「――― 子供の頃の事って ほとんど覚えてないんだよ ほんとに
 それだけ この頃 急に思いだしたんだ」
(宮沢)「ほんとに?」
(有馬)「ほんと」
(宮沢)「じゃ 思い出すたび ちくいち私に教えてよ?」
(有馬)「わかった」
(宮沢)「これからは 心配いらないね 私がいるから」

(有馬)
晴れわたる 初夏の空みたいな 宮沢が 僕は大好きで

だから言えない
僕の憎悪
かたく心を閉ざして
そんな事気にしないよって思い込んで
”いい子”になった気になった

でも僕は 宮沢を欲した
好きになるほど 心は
解け 皮肉なことに
僕が無意識のうちに隠し続け 存在を抹殺し続けていた
”本心”が 冷徹で残酷な ”本性”が
覚醒していくのを 抑えることができなくなった

僕は君とは違うんだ
だから決して 言うものか

だから決して 言うものか

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