彼氏彼女の事情 ホントの最終話

タイトル 「これほど倖せな人生はない」

(総一郎)「だいたい その夫婦ネタやめなよ!
 なんかほんとに僕が死んだら 現実になりそうでこわい!!」

有馬総一郎
並外れた頭脳と身体能力で順調に出世。
警視庁刑事部捜査一課の刑事として毎日うきうき勤務。
数多くの手柄をあげている。

(雪野)「・・・だって ね―― 実際この16年
 浅葉と夫婦組んだ時間の方が多いんだもん・・・・・・」
(浅葉)「いやおれ・・・ 自宅で仕事してるからさ・・・・・・」

浅葉秀明
日本画家。平成の夢二とかいわれている
美人画を得意とするイケメン画家として なんかもうものすごい人気。
描かれたがる女性ファン、絵の美女にほれこむ男性ファンとパトロン多数。
生活は地味だが じっさいは長者番付芸術家部門に毎年ランクインしている超売れっ子。


長男 蘇芳(14) 次男 藍(14)
濃厚な宮沢家のDNAを感じさせる二卵性の双児。
この春 中学3年生。
「おはよ―――っ」
「朝からなにあそんでんのっ あっお父さ――ん」
犬のようにジャレる兄弟

「蘇芳くん 藍くん だめよ お父さん疲れてるんだから」
長女 咲良(15)
だれがみたって怜一郎→怜司→総一郎のDNAを継いでる雪野と総一郎の第一子。
今日から県立北栄高校の1年生。

(雪野)「咲良ちゃん その制服似合う―――」
(雪野)「北栄高校の制服かぁ なつかしいな――っ」
(咲良)「お父さん お帰りなさい 今日はお休みですか?」
(有馬)「いや・・・ 今日は咲良の入学式だから
 ちょっと抜けてきたよ 顔見たくてね」
(咲良)「ありがとうお父さんっ・・・! 嬉しいです!」
高校卒業後の出来事の話で時間が過ぎていく
(咲良)「あ わたしそろそろ登校します」
(雪野)「ごめんね お母さん達 仕事で入学式出られなくて
 せっかく新入生総代なのにね」
(雪野)「なんだ なら おれが代わりに出ようか」
(雪野)「ホント――? 助かる―― じゃ ビデオ撮ってきて 観たいから――っ」
咲良に見つめられ たじろぐ浅葉


昨日 告白をしました
(咲良)「好きです。 秀明さんが好き」
汗をかき 浅葉の脳裏に 果てしない宇宙が広がる


(雪野)「うちの子ももう高校生か 早いな――っ
 そうそう 19年前の入学式 総代になった総一郎さんに激しく嫉妬したんだったわ」
(総一郎)「なつかしいね あのときは その相手の子を妊娠して卒業するなんて思わなかったよ」
(雪野)「咲良が小学校に入るくらいまでは子育てに専念するつもりだったのに・・・
物分りの良すぎる3才の咲良に 大学に行くよう諭される
(雪野)「そっこう勉強して 美大を卒業する浅葉と入れ違いで医大へ
 早く医者になれたのは年齢的にたすかるんだけどさ――っ
 昔はあんな『完璧な優等生』ってあこがれたけど・・・・・・・・・
 親からすると さびしいよ・・・・・・」
(総一郎)「・・・むかし僕も そうやって両親を淋しがらせていたっけ・・・・・・」

仕事の呼び出しが来る前に ちょっと横になる総一郎
その30歳を過ぎた有馬の寝顔にドキドキすることを 宮沢は浅葉に語る
携帯が鳴り 飛び出す総一郎
(雪野)「総一郎さん 忙しいかもしれないけど
 今日『陰陽』のライブだからね 卒業以来全員集まる日だから
 顔だせたら来てね」
(総一郎)「わかった」

(総一郎)
ぜ・・・ ぜんぜん眠れなかった・・・・・・・・・・・
宮沢と浅葉の話がうるさかった
でも・・・ そっか・・・ 雪野さん 僕といるとドキドキしてるんだ・・・・・・・・・
顔を赤らめる


「ねえ 今日だけでいいから あたしにつき合ってくれない
 フレンチの予約入れてあるの 最後に・・・ いい思い出つくらせて」

(総一郎)
高校3年のあの秋の日――――
あのとき「うん」と言った時間から 僕の運命は回りだした
のたうちまわって苦しんだ
自分とひとを傷付けた
愛するひとの肉体を奪って
子供さえつくった

多くの間違いを犯した
けれど間違う自分すら
愛されているんだと知った

僕は
ひとより不倖だったかもしれないけど
そのぶんだけ深く
ひとに愛されることと ひとを愛することの
悦びを学んだ

今も 時々蘇る 白昼夢―――――
あのとき「うん」と言わなければ
僕は 今も 自分に嘘を吐きつづけ
心の暗闇のなかをさすらっていただろうか

やがて宮沢の愛さえ喪って

あれから16年 あの女とは一度も会っていない


(雪野)「さあって わたしも出るかな――
 じゃ浅葉っ 咲良のことよろしくね」
(浅葉)「えっ うん」
気の重い浅葉
(雪野)「?」

有馬雪野
総一郎の父の経営する総合病院の形成外科医。
手先が器用なわけでもないが
なかなかいいかんじに仕上がる手術の腕前とその性格で人気医師になりつつある。

高志真秀
同病院の脳神経外科医。
几帳面な性格ゆえ、手術の腕は正確。
加えてクールな美貌のため患者、看護師ともにあこがれのマト。

(雪野)「ウス! 真秀さん 今日行ける?」
(真秀)「意地でも行くよ!! 『陰陽』ワールドツアー凱旋ライブだもん」


(浅葉)
おれは何か・・・・・・
咲良ちゃんの保護者として間違った接し方をしただろうか・・・・・・・・・

確かに咲良ちゃんは おれがずっと待ち続けた特別な女の子

だれも本当には愛せなかった虚しい心を
あたたかいもので満たしてくれた
考えたら 当たり前かもね
おれの好きな 有馬と宮沢の子なんだから
あの日から 毎日が満たされてる

「秀明さんが好き」

でもそれはあくまで
な――んだ おれってば 父性愛のヒトなのね〜〜〜
って気持ちなんだってば!!!


武道館
昔の仲間が集まる

沢田りか
大学卒業後、洋裁の腕をかわれ
人気デザイナー芝姫俊春専属の縫い子として
オートクチュールなど重要な仕事を任される。
今日は俊春が「陰陽」のマーティンのためにデザインした服を届けに。

沢田亜弥
人気作家として現在も活躍中
ジュニア向け 恋愛モノ ホラー 犯罪捜査モノなどジャンルは多岐。
現在長期連載最終回71ページを死ぬ気で執筆中。

宮沢花野
夢が叶え憧れの作家・沢井綾希の担当編集者に。
なだめつすかしつはげましつつ
原稿をとる敏腕編集。

佐倉椿
古代遺跡をめぐり世界中を放浪してみたり
エジプトの大学に通ってみたり
いつもまにかにアメリカの大学教授になってみたり。
本能と直感の発掘が結果を出してみたり。

十波健史
椿につきあって放浪しているうち
8か国語まで話せるように。
古代史にも目覚め真面目で緻密な性格から古代文字解析の専門家。

芝姫一馬
「陰陽」はあれからも仲よく活動。
世界に名を知られつつある。
世界的ジャズピアニスト有馬怜司と非常に親交が深く
曲の提供を受け、またその難解な曲を歌いこなす。
現在、二度目のワールドツアーを終えたばかり。

芝姫つばさ
一馬の妻として
毎日のほほんと暮らしている。


北栄高校の入学式が終わる
かつての高校時代のように その屋上でのんびりしている
(咲良)「秀明さん こんなところで寝ちゃうなんて びっくりしましたよ」
(浅葉)「はっ あ――・・ 寝ちゃったのか・・・ なつかしくて」
浅葉の顔を覗きこむので おちゃらけて言い返す
(浅葉)「そんな顔でみたって その気になんかならないよ〜〜〜ん
 ちょっとかわいいからっていい気になるな!?
(咲良)「ひどいことを言われました!!
 でも わたし以外の女 本気で好きになることできないくせに」
驚愕する
(咲良)「だから ずっとわたしがそばにいて
 倖せにしてあげますからね」
蒼白になる

(浅葉)
悪夢だ
これから 日ごと綺麗になっていく最愛の少女から
愛を囁かれ続ける
自分の未来が どこへ流れていくのか 見当もつかない

けれど こんな悩みで苦しんでいるおれは
とても倖せかもしれないけど――――・・・・

(咲良)「ため息つかないでください!
 わたし ずっと前から 秀明さんのこと好きだったんですから
 記憶にもないころからずっと・・・
 お母さんのお腹にいたころから好きだったかもしれないね」


「陰陽」のライブに 総一郎が間に合う
(雪野)「さっき・・・ みんなに久しぶりに会ったよ
 みんな倖せそうだったな――」
(総一郎)「そっか」
(雪野)「わたしたちも倖せだったね」
(総一郎)「うん・・・ あとは咲良さえ倖せにできれば・・・
 あの子が生まれた経緯が経緯だけに
 なにがあっても倖せにしなければって思うんだ・・・・・・・・・・・・」
(雪野)「でもあの子 ぬかりないからね―
 それに心配しなくても 咲良をすべてをかけて愛して守ってくれるひとが
 それをしてくれるよ」

(総一郎)
人生は くるくるまわる
親から子供 その子供へ
倖せになってと願いながら
倖せになりたいと足掻きながら

愛情
友情
憎しみ
怒り
成功と
絶望
高揚感
焦燥感
真実
偽り
言葉ひとつで傷つけられる
言葉ひとつですくわれる
欲望
無償
堕落
再生

すべてが渦巻く
この世界で

自分にいったい
何年の時間が
与えられているのかも
知らず
手さぐりで

泳いでく

(雪野)「わたしもまだまだ出世しますよ〜〜〜
 みんないろいろな世界で活躍してるし!」
(総一郎)「せっかくの人生 味わい尽くさなきゃ」
(雪野)「『ああ 面白かった 疲れた―――』って言って死ぬのが夢なんだ」
(総一郎)「そうだね。 人生本当におもしろくなるのは これからだよ」

PREV.TOP