彼氏彼女の事情 ACT4

(宮沢)
―――私 宮沢雪野と有馬総一郎くんは
先月まで 才色兼備 スポーツ万能 さわやかな性格で
校内にその名をとどろかす バリバリの優等生であった
でも 実際はちがう
優等生を”演じて”きたのだ
有馬は不幸な出生ゆえに
私はホメられたい 注目されたいやちやほやされたい
という肥大したミエの欲望ゆえに

でも ひょんなことから 互いの本性を知り
私達は 演じるのをやめようと決めたのだ
自分らしくなるために
しかし まあそれはいいんである

私はいま 非常に緊急かつ重大な問題に直面していた
実はまだ 私達はつきあっていない
なぜか?
それはあの告白のときにさかのぼる
そう 私は 言い損なったのだ
ガラにもなくアガったりして・・・・・!!
今や何事もなかったように友達づきあいをする私達である
やばい
このまま 時の流れに身をまかせてる場合じゃない
なんとか手を打たなくちゃ
それはっ
有馬に告白すること ・・・・なのだ!!

何度か告白をこころみる しかしどれも失敗に終わる
両想いなのに 告白したいのに どーしてうまくいかないんだろう

宮沢一人でいる教室
(有馬)「あれ 他の人は?」
(宮沢)「もー 帰ったよー あと 片づけだけだし」
(有馬)「なんだ 部活早く終わったから来たのに 手伝うよ」
(宮沢)「おっ ありがとー」

(宮沢)
これって 二人っきり・・・
おおっ チャーンス

机の上にある書類を落としてしまう
(宮沢)「あッ ごめん 私がひろう」
(有馬)「いいよ」

(宮沢)
どうしよう 気付かれた
見ているのを見られた
でも 言わなきゃ 今いわなくちゃ
いつもの私らしく ぱーっと言ってしまえば
・・・・・・・・・・
ど どうやって?
急になんでいまごろって 思われないかなぁ
あのとき 答えなかったくせにって
もう何日もたっているのにって
・・・・・それに
いまも 私を好きかはわからないし
そ・・・そうだよね
あのときは好きだったかもしれないけど
今もそうとは限らないんだよね
どっかで幻滅されちゃったかもしれないし
・・・・・ホラ だって私って こーいうやつだし
調子にのって 変なことしてたかもしれない
だって変だもん 私
見栄っぱりだし うそつきだし 性格だってよくないし
私は有馬みたいにできがよくない
有馬が私を好きだっていっても
どこがなんだかわからないよ
だってちっとも自分の なにがいいのかわからないんだもの

(有馬)「宮沢・・・? ・・・・・ どうしたの?」
(宮沢)「―――ううん」

(宮沢)
・・・・・いい!
友達のまんまでいい!
彼女になるだけがすべてじゃないもん!
べつにいい!
友達のままだって!

宮沢と有馬 一緒に帰るその途中で・・・
(有馬)「・・・・・宮沢さ
 僕 宮沢の気持ち 聞いてないんだけど
 いつ答えてもらえるんだろう」
(宮沢)「えぇ?」

(宮沢)
べつにいいよ 友達のままだって
あのときは好きだったかもしれないけど
今も好きとは限らないし
今も好きとは限らない
いい! 友達のままでいい!

頭の中がグルグルとまわり 泣き出す宮沢
(宮沢)「ごめん!」

(宮沢)
今 自分はとてもみにくい顔をしているだろう
このときになってようやく
自分を動かしていたものが 何なのかわかった
私は逃げていたのだ

家に帰って・・・
(宮沢)「私 ずるい・・・・・ 自分を守ろうとしてた
 傷つかないために逃げていた
 有馬のこと 信じようとしなかった
 今おもうと・・・
 告白しよーとしたときも どっか本気じゃなかったかもしれない」
(花野)「それに気付いただけで立派じゃんっ
 事実をみつけだして現実をみすえた時点で
 もう半分は問題は解決されているのよ!!
 お姉ちゃんって いままで 傷ついたことがないんだよ
 ず―――っとホメられてきたもんね
 しかも本性を上手に隠してしまったもんだから
 ホントの自分を出すのが恐くなっちゃってんだよ
 ウソの自分は傷つけられても痛くないけど
 ホントの心は痛いもんね
 お姉ちゃんが今 傷つけられたら一番恐い人は 有馬くんだもん
 お姉ちゃんは どっかでちゃんと気付いてるんだと思うんだ
 傷つくのが恐いのは 相手より自分の心を大事にしてるからだって
 わたし 好きになるって その逆のことかもしれないって思うんだよ」

(宮沢)
勇気が必要だ
このハードルを飛びこえなきゃ 恋にはたどりつけない

翌日 委員会の会議室
(宮沢)「おはよー」
(有馬)「・・・・・ おはよ」

(宮沢)
口でいうと またしくじるかもしんない
もし傷つくなら 最初の相手は 有馬がいいわ
隣りに座る有馬の腕に手を伸ばし 手をつなぐ宮沢

その日 ”彼氏””彼女”になりました

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