彼氏彼女の事情 ACT18
雪野の家
(つばさ)「私は再婚なんか 認めない
どんな手を使っても あの女からパパを取り戻すわ」
(雪野)「・・・っていうわけなんだけど・・・ この娘 ウチに泊めていい?」
心配した椿が 電話をしてくる
(椿)「やっぱりね そんなこったろーと思ったわよ
よかった 一応でんわして 今から行くわ」
(雪野)「ありがとう〜〜〜っ」
雪野の家にやってきて・・・
(椿)「ドーモ そこのバカがおさわがせしまして・・・」
ここで 椿とつばさの 壮絶な口ゲンカがはじまる
(椿)「言っとくけど あんたのパパに このこと報告したからね
会社終わったら まっすぐ来るって言ってたわよ」
(つばさ)「えーっ」
(椿)「いつまでも ダダこねてんじゃないよ
自分のことは 自分で解決しな」
椿を送っていく雪野 その途中で・・・
(雪野)「ごめんね せっかく来てくれたのに」
(椿)「アイツ・・・ ときどき 逆さ吊りして ムチでしばきたおしたくなる・・・・・
・・・・・まあ あいつがあんななのも わかるけどね
つばさん家って けっこー フクザツでさ
つばさの母親は つばさを出産したとき 亡くなったんだよ
だから父親はとても つばさのことを可愛がったんだけど
仕事忙しくて ひとに預けたりしなきゃ やってけなかったんだって
そーいう環境で育ったからさ
幼稚園ではじめて会ったときも 誰にもなつかず
スミでムッツリ うずくまってるよーなやつだった
感情の 基本的なトコが満たされてない
それでも父親とは うまくやっていたのに
その父親がよその女と結婚するっていうんだ
いやにもなるさ
あいつはず―――っと 満たされるってことがなかったんだと思う
私のとこは 家族そろってんで そーいうの 想像するしかないんだけど
みんなは当たり前に与えられるものを 生まれつき与えられなかったやつっていうのは
それをどうにかして 自分で埋めていくしかないんだよな
そーいうたたかいをしなきゃならないんだよな
――そういうのってなんか――
きついよな」
(雪野)
有馬はその気持ちを知っていた
だからつばさちゃんを 「妹」と思ったんだ
その頃のありまには 誰かに恋をするゆとりなんてなかった
”過去”は記憶の底に沈めて
完璧であることを 維持するだけで彼の中は 手一杯だったから
誰も有馬の視野に入らないなかで
つばさちゃんだけが「特別」だった
心のどこかで知ってるから
自分たちは「同類」だって
つばさのパパとその女が 雪野の家にやってきて 話し合うなか・・・
(つばさ)「どーしてその女の肩ばっかり持つのよ!
どーして 私の言うこと 少しも聞いてくれないの!?
私はパパと 二人だけでいたいの
ずっとずっと 二人だけでいたいの!
なんで私ひとりが わがままみたいに責めるのよ!!
なんで 私の気持ち 少しもわかってくれないのぉ!?」
(つばさのパパ)「・・・・・つばさ
パパはべつに おまえへの愛情がなくなったわけじゃない
つばさが事故にあったって知ったとき パパは気が狂いそうだった
ママを失って 今度はおまえにまで死なれたら 生きてゆけないと思った
そんな恐怖心を抱えて ひとりで耐えていくのは ほんとうにつらかったよ
パパは人間だ 完璧じゃない
支えてくれるひとが欲しかった
これからを 生きてゆくために」
『つばさ つばさは僕の 宝物だよ
世界で一番 好きだよ
誰よりも誰よりも 好きだよ』
(つばさ)「―――パパは ああいっていたけど
本当は私より あの女が大切になったのよね
私のこと育てるの 重たくなったのかもしれない
私から 逃げたいのかもしれないわ」
(雪野)「そんなことないよォ ―――ちゃんとわかってるんでしょ?
みんなつばさちゃんのこと 大切に考えてるじゃない」
(雪野)
いつか誰かが現れて
つばさちゃんの心を 満たしてくれたらいいのに