彼氏彼女の事情 ACT20

夏休み 有馬は部活の合宿で長野へ
浅葉が 宮沢の家に遊びに来る
(宮沢)「最愛のありまとも しばらく会えなくて つまんないねえ
 うちなんかに来たのも もうさびしくなったんでしょ」
うずくまり うなずく浅葉
(浅葉)「最近食欲 ないんだよなー・・・ それに毎晩 ありまの夢をみるんだ」
(宮沢)「まぁ あさぴん ありまにべったりだったもんねぇ
 しょっちゅう泊まりに行ってたし
 あんなに外泊して 家の人になにか言われない?」
(浅葉)「いや べつに?
 だっておれ ひとりぐらしだもん あれ 言ってなかった?」
(宮沢)「へえ――っ よく親が許してくれたね――っ」
(浅葉)「あ―――― おれ ムチャクチャ親父と ソリ合わなかったからな
 あいつが転勤するとき おれだけこっちに残ったんだよ
 いーかげん あの家から 離れたかったからね
 あっ 今 まずいこと聞いちゃったかな とか思っただろ」
(宮沢)「う うん」
(浅葉)「気にすることないよ そーいうことでおれ 傷ついたりとかしてないもん
 実の親子でも 相性悪いってのはあるもんでさ
 おれ 昔っから いーかげんで女好きだったから マジメな親父をイライラさせるんだ
 おれはおれで 真面目なだけで人間味のカケラもない親父がバカみたいで
 大ッキライだった
 血がつながってても キライなものはキライなんだ
 かえって 血がつながってる分 悲劇でさ
 寄るとさわるとケンカでさ
 母親は父親の言いなりで頼れない
 家がつまんないんだ
 だからおれは ガリ勉して進学校受かって ここに残ることに決めたわけ
 晴れ晴れしたねぇ
 家族一緒が幸せっていえるのは 恵まれた家の子供だけだよ
 家族といえるのが 苦痛でしかない
 逃げだしたほうが幸せになれるやつだっているんだ
 まあ その親の金で学校行ってて 逃げたもなにもないけどな
 宮沢の家っていいな
 おれ 円満な家の子って好きだよ のびのびしてて素直で
 有馬が宮沢を好きなのも そういう部分もあるかもしれないな
 だからおれは 宮沢も有馬も 好きだよ
 ―――ときどき思うんだ
 有馬の 真面目なところは どこか親父を思い出させる
 親父はダメでも 有馬は好きになれる
 有馬を好きになることで おれはずいぶんすくわれたんじゃないかって
 ときどき そう思うんだ」

(宮沢)
親に捨てられた少年と 親を捨てた少年
どんなことを話してきたんだろう 二人で
いままで 家族なんてうまくいってるのが あたりまえだと思ってたけど

少し不安になった
会わずにいるうちに
ありまのいろんな側面が見えてきて―――――
私はありまを
どこまで知っていて どこもで知らないんだろう

私は彼をちゃんと理解している?

こういうときにはっきりわかる
私は自分で思うほど 本当は強くない
ありまがいないと すごく不安で弱くなる

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