彼氏彼女の事情 ACT31

  「部活終了――っ!」
(椿)「ふ――っ 疲れた――っ」
椿の振り上げたタオルが 十波に当たる
(椿)「あっ 悪い 十波さん」
(十波)「いや 後ろにいたボクが悪いんだよ 佐倉さん」
十波のバックが 椿に当たる
異様な雰囲気の二人

しばらくして・・・
(十波)「よ―― まだ残って練習か? えれえ熱心じゃん」
(椿)「また てめえか
 一年でレギュラーとると みっともねーとこ みせらんないからな
 忙しーんだ 帰れ帰れ」
(十波)「ヒマだし 見ーてこ」
(椿)「あァ!? 帰れよォ あっち 行けって」
椿が投げたバレーボールに 十波が応戦 しばらく続く
(椿)「おまえさ なんで 私に つっかかってくるわけ
 転校してきたばっかなのにさ なんでそう私にからむわけ」
(十波)「嫌いだから オレ 嫌いなんだよ おまえみたいな奴 理由なんかねぇよ」
(椿)「・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ (ボソッ)嫌い嫌いは 好きのうち」
(十波)「は?」
(椿)「嫌いは 相手への執着!! LOVEに最も近い感情!!
 まさかおまえ 私に!!?」
(十波)「は・・・・・な なんの話だ」
(椿)「しかもここは 人気の絶えた体育館!!
 何かマチガイが起こるには うってつけの状況!!」
(十波)「ちょっとまて 何を・・・・・」
(椿)「悪いけど そういう気 まったくないから!! 他をあたってちょうだい!」
(十波)「あ おい! 妙な誤解すんなよ オレは嫌いって言ったんだよ
 腕力でオレにかなうかよ おまえは なにひとつオレに 勝てないんだよ」
両手を抑えられた椿 が 十波に頭突きをくらわす
(椿)「バーカバーカ (アタマを指差し)ケンカはここでするんだよー!
 私に勝とうなんざ100年早い!!」

(十波)
くそ
あんなんじゃダメだ
あんなくらいじゃ 少しも佐倉を傷つけられない
昔からそうだ
ひょうひょうとして とらえどころがない
糸のない凧みたいで 何にも縛られない
今のことだって ちょっと頭にくることがあったくらいで
すぐに忘れてしまうんだ
どうせオレのことも そうやって2年間
ろくに思いだしもしなかった
あの言葉が どれほどオレを傷つけたか
この2年間 どんな思いをしてきたのかも

そういうところが憎いんだよ
オレの屈辱は まだ少しもおまえを傷つけられない
必ずいつか 味わわせてやる
オレと同じ痛みを

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