彼氏彼女の事情 ACT33

翌日 有馬との すれ違いざま・・・
(十波)「あ ありま君」
(十波)「あのっ あのっ」
なにも答えず 通りすぎる有馬

(十波)
完全にきらわれてる・・・

(宮沢)「おはよっ ねー 今 ありまいなかった?」
(十波)「わあああ! オ・・・オレに近づくなあああ」
(宮沢)「?」

(十波)
ありま君は ボクに優しくしてくれた 一番の友達
今なら分かるけど 当時のオレは 甘やかされた じつにイヤなガキで
嫌われても仕方なかった
でも ありま君は そうしなかった
ひとりになると さり気なくそばに来てくれる
皆はありま君のまわりに集まるから
ボクはあのクラスでは いじめられるとこがなかった
公平で やさしくて そして恐ろしく頭が良かった

ごめんよ
そんなに宮沢が大事だって 分からなかったんだ

薄暗みの廊下で見せた 有馬の表情を思いだす
・・・でも 正直びっくりした
ありま君が あんなに感情をむきだしにするなんて
恋愛って そーいうもんなのかな

・・・・・ むきだし?
あれ じゃ ありま君の中には もともとそんな部分があったのかな
なら オレが中学のときみてた あのありま君は?
・・・・・見せかけ・・・
・・・・・・・・・・だったの?
ばかな ありま君はそんな人じゃねーよ!

いや どっちかっていうと・・・
あの頃は ソボクに信じてたけど
全員と平等に接するっていうのは
まるで全員 同じようにしか見えていないみたい

あれ?
・・・なんかオレ
開けてはいけない箱を開けかけているような・・・・・・・・・・

  『お前の知っている有馬くんは ただの模造品だろ』
・・・・・そう でも あれがほんとうのありま君

想う気持ちの全ては宮沢に
反発や敵意は 宮沢と自分を妨げるモノ全てに
宮沢に関わるときだけ 有馬君は 感情を抑えられなくなるんだ

はじめて ボクは 夢やアコガレでないありま君を 知りたいと思った
今度こそほんとうに
ボクは君と 友達になりたい

ありま君 君の心は どこに在るの

宮沢が運んでる教材を持ってあげて 一緒に資料室へ行く有馬
教材をしまっている有馬 その背後から宮沢が抱きつく
(有馬)「み・・・ 宮沢!?」
(宮沢)「いや 何となく・・・ このごろ スキンシップが足りない気がして・・・・・・・・・・」
(有馬)「・・・・・・・・・・それは 僕の努力が足りないということでしょーかっ おじょうさま」
(宮沢)「んーん 夏休みずっと一緒だったのに 文化祭で急に忙しくなっちゃったから――
 ありまといるの楽しいから やらなきゃいけないこと うっとおしくなる
 文化祭終わったら 思いっきり べったべたしようねぇ」
(有馬)「べったべた・・・」
心地いい陽射しを受け 穏やかな時間をすごす
(有馬)「僕といたい?」
(宮沢)「うん
 ―――なんでかな 有馬ときどき まるで別の人みたいな目をするね」
(有馬)「・・・・・そーかな 変? 恐い?」
(宮沢)「んーん」

(有馬)
日毎 歯車が狂ってゆく
暗闇のほうへ
どうしてそんなこと言える?
君を独占したいなんて
自由な君が 本当に好きなのに
一方で すべてから奪いたいと思う

こんな気持ち 知られたくない

亜弥が書いた脚本の芝居を 文化祭でやることになる
雪野 椿 りか 亜弥 つばさ 真秀 浅葉 土手でお昼をすごす
(真秀)「ねえ」
(雪野)「ん?」
(真秀)「何で急に芝居 やる気になったの はじめイヤがってたのに」
(雪野)「・・・・・・・・・・あー
 はじめて 勉強以外で面白いって思ったから
 ここのとこずっと 何か急に夢中になれるものが欲しいと思ってたからね
 私には 勉強とありましかないけど
 ありまはちゃんと 別に他の世界を持っていて インターハイ行ったりするんだもん
 くやしいというか・・・ 私は私の世界ってのを持ちたいじゃない
 ―――――そうじゃないといけないと思う
 それに有馬 私のこと好きなんだもん」
(真秀)「・・・・・・・・・・あア!?」
雪野のむなぐらをつかむ真秀
(雪野)「いや じ・・・自慢じゃなくて!
 ありまは私より 世界が深い
 なにも知らない私を悩ませたり 苦しめたりするくらいなら
 自分で抱え込んじゃうんじゃないかなぁ
 だから 私は私の世界をつくろうと思ったの
 ありまに甘えるのは好きだけど
 甘やかされて なまけてしまうのは絶対にイヤ

(真秀)
・・・ふーん
だから有馬は 数ある女の中で 宮沢にだけ反応したんだ

そのころ 学校で・・・
(十波)
ありま君を理解するにも そもそも 恋愛感情ってもんが分かんね――

椿と浅葉が話してるのを ちょっとはなれたところから見てる十波
話しが終わって 十波に気付く
(椿)「あれ 十波」
(十波)「バ――――カ」
思いっきりなぐられる
(十波)「ってえな なんだその怪力は てめーなんか女じゃねーよ」
(椿)「うるっさい バカって何だ!!」
(十波)「つっせえな―― 言いたいから言ったんだよう バ――――」
にらまれる

(十波)
くそっ
何だ このムカつきは

こいつもさー 昔は 男なんかと ヘラヘラ笑うよーなやつじゃなかったのに
・・・それにきのう オレとキ・・・キ キスッ キスとかしといて・・・

なぜオレは あんなことしたんだろう
うそっ もしかしてオレ 男が好きな人!?
オキナワで女の子に 「つき合って」って言われても ぜんぜん乗れなかったし!
じゃなきゃ だれがあんな男 男したやつなんかに・・・・・
椿のうしろをついていき そのうしろ姿を見て・・・
え?
佐倉って あんなだったか?
前はもっと力づよい・・・・・

あれ
回路が一コ つながってない
なにか 大事なことがひとつ 抜けている

蝶に驚いた椿 階段を踏み外す
(椿)「わッ」
十波に倒れこむ

(十波)
えっ
なんでこんなに軽いんだ!?
こいつの腕は こんなに細かったか!?
オレの中に焼きついた佐倉のイメージは
”圧倒的に自分より強いモノ”
だから いつまでたっても 絶対的に強いのかと

どーして今まで 気づかなかったんだ
もともと体のつくりが違うんだ
きたえれば オレは佐倉を たやすく抜いてしまうんだ

もたれかかった椿と 十波の目が合い・・・ が 突き放す
カベに頭をぶつける椿
(椿)「のわっ おまえ〜〜 助けたり つきとばしたり・・・」
赤面し 逃げだす十波

(十波)
むかし ボク達の間には 性別が無かった
だから 長いこと この感情に名前をつけることができなかった

簡単なことだ
なぜ佐倉に なんとも思われていなかったことに あんなに深く傷ついたか
なぜ どうしても ボクの存在を 佐倉にきざみつけたかったか
なぜ 佐倉が 他のヤツといると 不快なのか

好きだからだよ
ずっと胸の中で 行き場のなかった思いは
やっと出口を見つけた
ボクはただ
君に知って欲しかっただけだ
ボクという人間が ここにいることを

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