彼氏彼女の事情 ACT35

自販機の前でジュースを飲んでいる十波
(椿)「十波! ウーロン」
教室から 十波に買ってきてくれるようお金を投げる椿
(椿)「サンキュ」
二人並んでジュースを飲む
(椿)「フ――― 今日は暑いな――」

(十波)
いつまでこんなこと続けるんだろう
不毛な 意地ばかり張って

開放されたい 気付いて欲しい
オレだけは特別 自由な佐倉の心を つかまえる者でありたい

ふいに目と目が合い・・・・・キスをする
(十波)「―――何でだ?」
(椿)「え?」
(十波)「なんでオレと キスするんだ」
(椿)「したかったからでしょ」
(十波)「〜〜〜! したかったらだれとでもするんかい いかれてるぞ お前!」
(椿)「だれが だれかれかまわずするっつったよ
 十波とは前もしたし ヤじゃないし そうするのがふつうみたいに思っただけ!
 ―――おまえだってそうだろ?」
(十波)「・・・・・・・・・・」
(椿)「?」
(十波)「――――― もしかして おまえ オレのこと 好きなのか?」
(椿)「うん」
(十波)「好きって分かってるか!? 友達とはキスしないんだぞ!」
(椿)「わかってるよ――!
 おまえといると楽しいし おまえのこと よく考えるよ
 それに何で? おまえみたいなやつ 好きにならないわけがないのに」

(十波)
気付かれていないわけじゃなかった

椿を抱きしめて・・・
(十波)「オレも佐倉 好きだよ」

(十波)
ちゃんといたんだ 佐倉の中に

はじめて触れた佐倉の肩は やっぱり思った以上に ずっと細かったけど
抱えつづけたボクの痛みを 消すには充分だった
ボクはようやく 過去から開放され 新しく歩きだせる

・・・いずれ言おう 時期をみて
オレがあの 十波健史だって

有馬くんは?
君が心に抱えているのは

何度目かの 廊下での有馬とのすれ違い
(十波)「あのっ 無神経なことしてごめん もう絶対 あんなことしない
 オレ 好きなやついるんだ
 オレは有馬のこと 友達だと思ってるから
 許してもらえるまで あきらめないから」

文化祭の準備で疲れ 教室で眠ってしまった宮沢
そこへ有馬は近づき 宮沢をみて・・・
(有馬)
君のほかに 何を求めるというの

(宮沢)「う・・・っ わああああああ!!!」
急に起きだす
(有馬)「わああっ」
(宮沢)「ああ びっくりした・・・
 竹槍で突かれる夢を見たわ・・・ こんな暑い日に昼寝すると たいがい悪夢よ」
(有馬)「それは驚くだろうね 宮沢 今日 何時まで?」
(宮沢)「う〜〜〜ん これから広報と生徒会に顔だして
 そこで何もないならまた お芝居の練習に戻る」
(有馬)「大変そう」
(宮沢)「有馬だって大変でしょ 私より多く 委員会かけもちしてるし
 ありまは? 剣道部はたべものやさんやるんだよね」
(有馬)「うん 宮沢のほうは? おしばい順調?」
(宮沢)「うん けっこうみんな すごいよ〜〜
 今日りかちゃんが作った衣装 みたんだけど 上手だった
 あさぴんもじっさい 本当にものつくるセンスあるしさー」
(有馬)「へえ」
(宮沢)「社会勉強になってるかな 才能ってのはいろんなものがあるんだよね
 『勉強ができる』ってのは万能じゃないんだ
 たくさんある才能の中の一つなんだ
 『私は勉強くらいしかできない』って がっかりとかしないんだ
 友達や自分の能力を そんなふうに考えられる自分の知識は好きだもん
 こうやってひとつひとつ 自分のいいところをみつけて伸ばしていけば
 もっともっと 自分を好きになれるでしょう?
 そしたら有馬はもっと 私を好きだと思ってくれるもん」

(有馬)
・・・・・なんでかなあ なんでかなあ
こんなに想われているのに
どうして僕は 幸せになれないのかなあ
想うほど心は醜く 汚れていくのかなあ

(有馬)「・・・・・これ以上?
 今だってこれ以上 想いようもないくらい好きなのに」
(宮沢)「まだまだ 私達はこれから どんどん大人になるんだし」

(有馬)
本当の僕を知っても

君の光で 僕を照らして
暗闇につかまらないように

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