彼氏彼女の事情 ACT37

  『束縛されるのは 私はいやだ 分からないならいいよ』

(椿)「あっ トナミ!」
(十波)「おい おい おい!!
 おまえな〜〜 昨日オレにあんな言葉あびせといて
 よくそー 切り替えられるよな」
(椿)「え―― だって」
(十波)「オレ やっぱり お前にはついていけないわ」
さっさと去る十波

(十波)
オレは佐倉とつき合って
それから どうするつもりだったんだろう

絶対 追って来ない
ひとりになっても 自由を選ぶ
佐倉はそういう女だから

確かにオレ達は お互いを好きだけれど

オレは 佐倉がオレに気付きさえすれば それで満たされるんじゃないかと
それなら 幸せじゃなかった今までも むくわれると思ってた

でも違う
だれも風のような佐倉の心を つかまえることができない
オレはいつまでも 佐倉を追いつづけなきゃならない
満たされることのないまま ずっと

そんなこと とてもできない
余裕がない
今だってギリギリで 自分を支えているのに

もうやめよう
いつまでも 子供の頃の執着に囚われるのは

佐倉はオレに気がついた
それでもう
充分じゃないか

一緒にはいられないけど
佐倉のことは いつだって好きだ
あいつの自由さが ほんとうに好きなんだ

宮沢の誘いで 有馬と浅葉と ゴハンを食べに行く十波
その途中の 有馬と宮沢を見ていて・・・
(十波)
どんなに辛いときも そばにいるといつの間にか 全て忘れて 笑ってる

ああ そうか
みんなが有馬くんを「特別」だと思うなか
宮沢だけが彼を ただの同い年の男の子に見てる
実力が同じだから 安心して頼れることも 力を貸すこともできる

なぜかは分からないけど
ふだん みんなが見ている「有馬くん」は
彼が長い時間をかけてつくり上げていったもので
本当の感情を 抑えこんでできてる

宮沢は有馬くんから 「完璧」さを奪う
たぶん宮沢は
はじめから 「完璧」の奥にある有馬くんを好きだから

宮沢だけが

だからあんなに「大切」なんだ
だから「特別」なんだ

そうか・・・
オレにはできなかったけれど

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