彼氏彼女の事情 ACT42

文化祭が終了し そこかしこが そのまま後夜祭で盛りあがろうとしている
一人 図書室にいる椿 それを見つけるが 避けようとする十波
(椿)「トナミ そうやって おまえ 卒業まで私から逃げんの」
図書室の中に入り 椿の近くの席に座る
(椿)「兆発に乗ってんの 単純な奴!」
(十波)「わるかったな 単純で――」
(椿)「べつにー そういうとこ好きだし」
(十波)「・・・・・・・・・・ 別れたっつーの」
(椿)「いいじゃん 私は好きなんだから」

(十波)
本当によかったんだろうか
こんな女には二度会えない
好かれる確率はもっと無い
佐倉といたって オレの心は埋まらない
そんな了見で捨ててしまってよかったんだろうか
でも ―――後悔しない?
将来 会うこともできなくなっても

みていた本を置いて・・・
(椿)「・・・ふ―――っ やっぱ いいなぁ」
(十波)「・・・あ?」
(椿)「遺跡 好きなんだよね
 親が頼むから 高校は出てくれっていうから来てるけど
 ほんとは働いて 世界中の遺跡をみてまわりたい
 卒業したら日本をでる 世界中放浪してくらすんだ――
 どうだ? トナミも 一緒に―――」
(十波)「行かねえよ」
(椿)「・・・・・ そうか」

(十波)
気分が悪い

(十波)「・・・・・・・・・・ あんた いいよな スケールがでかくてさ
 どーせオレの悩みはつまんねぇ 小せえことばっかだよ
 ―――自分が嫌になんだよ」
(椿)「?」

(十波)
気分が悪い

(十波)「好きでいたっても 辛いだけなんだよ
 一生かけても 俺はあんたをつかまえることができないって思い知らされるんだ」
椿を引き寄せ キスをし そのまま床に押し倒す
(椿)「トナミ」
(十波)「見ろよ オレを見てくれよ
 あんたは それくらいしてくれたっていいはずだ
 オレは”タケフミ”だよ あんたの知ってる あの”タケフミ”だ」
(椿)「そうか・・・ でも なんだか お前 苦しそうな・・・・・
 つかまえたり つかまえられたり
 どっちがどれだけ好きだとか ―――苦しいだけじゃん
 他の人とはきっとムリだけど
 お前となら 肩を並べて同じ方を見ていけると思った
 遠い地平の向こうまで」

(十波)
佐倉は 飛びたければ 一緒に空を飛べという
オレはもう自由に空を飛べたんだ
地上に縛っていたのは自分自身

本当にすごいな お前は

オレは この女に愛されて 幸せだ

翌日
(宮沢)「涼しくなったね――っ
 通常授業に戻ったし これでしばらく ありまとのんびりいられるよ
 そーいえばさ 聞き忘れてたんだけど お芝居の後半 体育館来てた?」
(有馬)「見てたよ」
(宮沢)「ふーん そういえば先の話なんだけどね
 お芝居 卒業生を送る会でまた演らないかって」
(有馬)「すごい」
(宮沢)「また忙しくなるかも
 協力してくれたバレー部の子たちとも仲よくなった 今度 遊園地いくんだ」
(有馬)「そんな忙しくして 成績下がっても知らないから」
(宮沢)「あ 私 一番狙うの もうやめる
 3年になるまでは 10番以内におさえて 他のことを一生懸命やろうと思うの
 それまでは 首席の座は ありまにゆずることにするね―――」

(宮沢)
私は
目の前に広がった 新しい世界に目を奪われて
彼の送った小さなSOSを見逃した

はじまりは二人だった
二人だけの世界で お互いを見てた

私はこのことを ずっと後になって
ものすごく後悔することになる

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