彼氏彼女の事情 ACT43

(真秀)
高台へ向かう道には 綺麗な庭の家が多くて 四季折々に
ビオラ ジャスミン ミモザ 桜 ばら ひまわり 秋桜 雪柳
そこを抜けると 瀟洒な煉瓦のマンションが建っている
この道を通ると 幸福な気分になる
だから わざわざ遠まわりして 学校に通った

貴志のマンションで勉強をしている
(真秀)「なんで 問題解かなきゃなんないの
 ”お芝居成功したごほうび”にごちそうしてくれるって聞いたんだけど」
(貴志)「甘い!
 真秀 医大狙うんだろう 楽しみの前に勉強勉強
 ―――こうでなきゃ医者にはなれん!
 いっとくけど 勉強と恋愛の両立できないアホギャルと俺 つき合う気ないから
 がんばってね―――――ん」

(真秀)
私が16で 貴志さんが28
十二 歳が違うけど つき合ってます(一応)

傍らで眠ってしまった貴志
(真秀)「・・・・・・貴志さん 仕事で疲れてるのかな」

(真秀)
外に連れてってもらうのも嬉しいけど 私は この家にいるのが一番好き
貴志さんに会ってから 世界の色が変わった
もし会えなかったらなんて 考えたくないな
誰のことも好きじゃなかった
自分のことも
世の中は白黒に見えてた

回想 貴志に会う前

(真秀)
人の中にいるとき 孤独を感じるが
自然の中を歩くときは 寂しいとは思わない
と言ったのは モンゴメリ

毎日通ってる道なのに はじめて小道に気が付いた
坂口安吾の小説みたい
連れてかれてっちゃいそう
冷たい孤独 花びらになって消えてしまうのよ
消えてしまいたい

毎日つまらなくて 堪らないのよ

わー きれいんなマンション ドラマにでてくるみたい
中 どうなってんのかな いいなぁ こんなとこに住んでみたい
初めて貴志を見かける
こーいうとこ住んでる人って どーいう人なんだろう
ホストかな・・・・・・?

貴志が働いている歯医者でバッタリ会う
(貴志)「あー やっぱりそうだ! 昨日 うちの前いたでしょ
 セーラー服のきれーな女の子が 花いっぱい抱えてたからすごい印象に残ってんだ」
(真秀)「? ああ! ホストの人だ!」

後日 道でバッタリ、、、
(貴志)「ああ 君 ホストで――す 家 この辺なの?」
(真秀)「あっちです 神社の向こう」
(貴志)「ああ 旧い御屋敷街のほう」
(真秀)「遠回りして帰るんです 最近ここ発見して
 かわいい家多くて 花がいっぱい咲くから
 これから5月でしょ 毎日 いろんな花が咲いてくから・・・
 この道が好きなの」

(貴志)
へ――
しっかし ほんっと キレイな子だなーっ
こんなめいっ子いたら ムチャクチャかわいがるよ

(真秀)
それから よくその道で行き合って いろいろ話すようになった
貴志さんは 親とも同級生とも世代が違うので かえって話しやすかった

(貴志)「なんだ 中みたかったの 早く言えばいいのに 別にいいよ」
(真秀)「えっ でも・・・」
(貴志)「? だ――れが中坊に女を感じるかっつの!」
(真秀)「わあ 景色きれ――い 部屋もイメージぴったり」
(貴志)「そうですか」
(真秀)「ひとり暮らしのわりにキレイだね お手伝いさんいるの」
(貴志)「いや 潔癖症なんだ! いーだろ 不潔な歯医者より」

(真秀)
でもこの部屋 落ちつくわ なつかしいみたいな・・・

違う
私 なんとなく知ってた 貴志さんがきれい好きなこと
髪や服で
そういう感じがとてもいいなと思ってた
だから この部屋が落ちつくと思うのは
貴志さんといると落ちつくということなんだ

暗闇の世界がカラーになったみたいに

(真秀)「貴志さん 私 あなたのことが好きになったみたい
 好きになっていいですか?」
(貴志)「!? だめです」

それが始まり

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