彼氏彼女の事情 ACT68

(浅葉)「そうだよ 有馬は 宮沢に本心を言ってないよ
 なんでかは おれも知らないけどさ――」
(宮沢)「なんで!? 私のことずっとだましてたの!? そんなのひどい」
(浅葉)「だます? 本気で言ってんの?
 有馬が平気で人をだます奴だと?
 なぜ本心を言わなかったのか 理由を知ろうともしないで?
 そんなに子供じゃあ 有馬も色々打ち明けられないだろうけどさ―」
(宮沢)「・・・・・・ 私に怒ってるの?」
(浅葉)「さぁ」
(宮沢)「わかるわけないよっ なんなのよ 急に・・・・・・
 全然知らない人みたいに
 総一郎さんも・・・ 浅葉もだよ!」

(浅葉)
でも 気付いてしまったなら 知って欲しい
どれほどの想いで 有馬が君をみつめてきたか
あの暗闇から 救い出せるのは 宮沢だけ
闇の中 ただひとつ輝くもの
孤独の壁を 光の力で崩すもの
その烈しい憧れ
宮沢だけが 有馬を変えることができるんだよ

(宮沢)
本心を言ってない いつから いつから

私達は お互いの本性を知って
これからは本当の自分になろうねって約束をした
高一の春のこと

あの人は 私に 何も話してはいなかった

分からないのは いつからだったかということ
私には 思いだす責任がある
有馬の変化に気付きもせず
笑っていた私には

入学した時から

7月
優等生をやめて 地を出したのがたたって クラスの女子に無視されたっけ
平気でいられたのは 有馬が支えてくれたから
私はみんなに受け入れられて それをきっかけに
”本当の自分”になっていけたんだ
だから まず私が先に 「外」に出た

夏休み はじめ
有馬は合宿で会えなくて はじめて「友達」と過ごして
自分が今まで ”勉強”っていう小さな世界しか知らなかったっていうことに気が付いた

そういえば その時何か 思った
 「――私には 勉強とありましかないけど ありまはちゃんと別の世界を持っていて
  くやしいというか・・・ 私は私の世界ってのを持ちたいじゃない
  ありまは私より世界が深い
  なにも知らない私を 悩ませたり苦しめたりするくらいなら
  自分で抱え込んじゃうんじゃないかなぁ」

・・・そう思って
私は私の世界をつくろうと思ったの・・・・・・

あれは9月
自分の世界を広げたくって みんなでお芝居をつくった
成功して 世界はどんどん広がっていったのに

どこで 道をまちがえた
どこで 彼は私を 諦めた

 (宮沢)「そーいえばさ 聞き忘れてたんだけど お芝居後半 体育館来てた?」
 (有馬)「見てたよ」
 (宮沢)「また忙しくなるかも」
 (有馬)「そんなに忙しくして 成績下がっても知らないから」
 (宮沢)「あ 私 一番狙うの もうやめる
  首席の座は ありまにゆずることにするね―――」

弱音を吐かない彼の たった一度の

有馬・・・
あたしが絶望につき落としたのなら
引き上げることだってできるはず
あたしはあなたに 輝くような世界を見せてみせるわ
あたしを好きになって良かったと
―――思わせてみせる

別れを言いに 母の元へ行く
形勢は逆転し 有馬は虐待され 気が遠のく中で
(有馬)
宮沢
なぜだろう ずっと君のこと 忘れていた気がする
君のことが好きなのに こんなに好きなのに
どうして 君のそばにさえいられれば
分かり合えなくてもいいなんて思ったんだろう
汚い自分も分かってもらうしかなかったのに

淋しい
淋しい

過去に封じ込めた記憶を思い出し 失神する

記憶の濁流の中で 宮沢のことを考えていた
僕の神

会いたい


(花野)「お姉ちゃん 今日は勉強はしないの?」
(雪野)「しばらく勉強はやめることにしたわ 今しなきゃいけないことがあるの」

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