彼氏彼女の事情 ACT70

(宮沢)「一度 そちらに戻った・・・?」
(有馬の父)「ええ でも またすぐ出かけてしまって
 行き先? さあ なにぶん急だったものだから・・・」

(宮沢)
なにか変だ・・・・・・
総一郎さんが ご両親に何もいわずに外出するなんて
昨日から おじさまも おばさまも
身内以外の人間に言えないこと あるみたい

やっぱり
今朝 ここに総一郎さんが来た気がする

なにがあった・・・

昼間の街を さまよう
(有馬)
いつのまに・・・
どこだろう ここ

グチャグチャな顔をした 幼い自分がついてくる
やめろよ 今さら出てくるなよ

どれくらい歩いたんだろう
疲れた 休みたい のどがかわいた
お金 ないや

父さんと 母さんに 嘘が分かってしまって
傷つけて

一番会いたい人にも
ずっと嘘をつきつづけてきたから
こんなとき 会いに行けない

浅葉のアパートにたどり着く

(有馬)「―――昨日  母親に もう会わないって言ったら 張り倒されて
 思い出したんだ 昔のこと
 引き取られる前の どれだけ 親に殴られたのかとか
 愛情のカケラもない 罵声 あざけり

 それでも 母親にこびへつらって 愛されようとしてた
 みじめな

 思い出したくないのに
 止まらないんだ

 しかも 黙って母親に会ってたこと
 両親に知られてしまった

 なんでこうなる!?
 なんにも うまくいかないんだ
 どうすればいいか 分からないよ」

(浅葉)「有馬 おれはおまえに言ってないことがある
 昨日 宮沢がおれを呼び出して 聞いた
 『私は有馬に ずっと嘘をつかれてたの』かって
 おれは『そうだ』って 言った
 宮沢は お前の嘘に 気付いたよ」

思いっきり浅葉を殴る
(有馬)「なんで言ったんだよ なんで否定しなかったんだよ」
(浅葉)「そんな嘘 いつまでもつづくかよ
 もともと 嘘をつき通すには おまえの精神が不安定すぎるんだよ」
再び浅葉を殴る
(浅葉)「殴りたきゃ 殴れよ
 おれだって 宮沢が気付いてないのに 言ったりはしねーよ
 でも宮沢は 気付いてくれたじゃないか

 おまえが 細心の注意を払って 宮沢に気付かれないようにしてたのに
 時間はかかっても
 ちゃんと真実をみつけたじゃないか
 それだけ宮沢は おまえを見てたってことだ
 そのほうが 嘘に気付かれないよりも 愛されてるってことじゃん

 宮沢も おもえの両親も おれも 他のみんなだって
 おまえを大事に思ってるよ」

ここまで言いおわると 殴られたダメージで気を失う
(浅葉)
もしおまえが女なら 時々 そんなふうに考えた
おれは求めていた女性を 手に入れられる
必ず倖せにしてみせるって

もし求めていた女性を手に入れられたら
おれは生きながら 天国にいけるのに


倒れた浅葉の部屋から 自宅に電話し 今朝のことをあやまる
(有馬)「お父さん・・・ ありがとう
 お父さん達が いつも僕に必要以上に甘くって
 不機嫌な顔ひとつ見せなかったのは
 僕が忘れてる 昔のことを 思い出させたくなかったからだね
 実の親のこと 話せなかったのも」
(有馬の父)「まさか」
(有馬)「うん 思い出した でもきっといつかは 思い出したんだよ
 僕は僕で ことさら“いい子”にふるまうことで 父さん達に本音をぶつけなかった
 これじゃ 本当の親子にはなれないね
 でもこれで 父さん達と向かい合うことができる
 これからは 本当に 親子になろう」

浅葉が気が付くと 有馬がまだ そこにいたことに安心する
身を縮め 泣いている姿を見て心配する浅葉
チャイムの音 ドアを開ける
(浅葉)「はい 宮沢・・・」
(宮沢)「有馬の居場所が分からないの
 家のひとの様子も変だった・・・
 だから ここじゃないかって思ったの いるでしょ? 会わせて」
(浅葉)「・・・・・・
 え―― なにそれ おれ 今帰ってきたとこなんだよ」
宮沢は 玄関にある靴を指差す
(宮沢)「その靴 有馬のだよ ・・・・・・ なんで嘘つくの・・・・・・
浅葉に止められながら 部屋の中に向けて話す
 有馬 いるんでしょ 話がしたいの
 聞くから 今まで気付かなかったぶん 全部聞くから 話をしようよ」
すっと 無表情の有馬が現れる
(有馬)「会いたくない」
ドアを閉めてしまう

(宮沢)
全身から 蒼い火花を散らせて ――――――
知らない人が そこにいた

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