彼氏彼女の事情 ACT74
病院のベッドで眠っている
(有馬)
ここは お父さん お母さんの家
この家に引き取られてからの記憶はあまりない
それまでの記憶を失ったばかりで
頭がぼうっとしていたんだろうか
思えば 最も幸せな時だったかもしれない
羽根のふとんにくるまれて
両親の愛情にくるまれて
傷ついた心を ゆっくり癒してゆく日々
でも 時々 揺りもどしに悩んだ
しっかり しっかり
しっかり心を閉ざさないと
もう決して思い出さないように
ただ愛情をそそがれて
体に心地よくて
あたたかくて広い胸も
お父さんの匂いも
泣けるほど安らいで
だけどこれ以上 お父さんに心を開けない
愛することをやめたから
愛してしまったら
やっと塞いだ傷口が 血を噴くから
耐えられないから
そうやって しっかり しっかり しっかり しっかり
愛する気持ちを閉じ込めて 忘れきった
「いい子」になって
それ以上 父さん達に踏み込まれないよう距離をとって
愛情はあっても まるで“恩返し”が義務のように
そんなわけないのに
お父さんとお母さんは ただ僕に 自由に生きて欲しいんだ
僕を愛しているから
愛せるようになった今なら分かる
有馬の目から 涙がこぼれる
(宮沢)「―――馬 有馬!
どうしたの? 傷が痛むの!?」
(有馬)「な なんんでもな・・・」
言いかけた有馬の鼻をつまむ
(宮沢)「なんでもなくないでしょ! それ 有馬の悪いクセ
これからは ためこまないで話してね 私はなんでも聞くんだから
私は そばにいるからね」
(有馬)
そうやって
僕の醜い過ちさえも 受け入れてくれる
不思議だな 人を愛せるようになったとたん
自分が こんなに人から愛されていたってことが分かる