彼氏彼女の事情 ACT90
総司は 家に帰らなくなった怜司を何日も探している
たまに帰ったとき たまたま 義姉・志津音と会う
(志津音)「いつまで いじけてるつもり
あのひとには 病院も患者さんもあるんだよ」
(怜司)「じゃあ 言っとけよ もう探すなと」
(志津音)「探されなくなったら泣くくせに」
(怜司)「・・・・・・ 何だと?」
(志津音)「凄んでもきかないよ 甘えん坊の怜司くん
総司さんのことが本当に嫌いなら
そんなふうに わざわざ逃げまわったり 心配させるようなことしない
逃げるのは 追いかけて欲しいから
心配かけるのは 自分を忘れないでいてほしいから
ひとりでも平気って顔して
背中ごしにお兄さんがいるか いつもたしかめてる
意外に 子供っぽいのね」
近くにあった大きな壺を投げつける 志津音の脇を通り過ぎて割れる
(志津音)「ほらね わたしを傷つけられない
わたしなんて目障りだったくせに いつもうまくやろうと努力していたよね
私を攻撃したら いくら兄でも見限られるって 知ってたから
悪いのは 総司さんでも あなたでもなくて
この家だよ
こんなことしてたら だめだよ 取り返しがつかなくなる前に・・・」
(怜司)
兄貴の傍で オレのせいで傷つけられていく兄貴を 見続けろっていうの
休養している総司に話しかける
(総司)「・・・そう 怜司に会ったんだ・・・」
(志津音)「・・・・・・・・・・・・ こんなことを言って悪いんだけどね
子供の頃からわたし あなたのお父様が怖かったの
整いすぎていて 考えていることがわからなくて
わたしは あなたみたいな人が好きだから・・・
有馬の家のことは すべてお義父さまが原因だって思ってたのね
それでそのあと 実家の父のところへ行って そのこと話したのね
そうしたら教えてくれたの
『今まで誰にも言ったことはなかったけれど』って・・・・・・・・・
あの誰もがため息をつくような美貌の玲一郎さんの父親はね
とても醜い顔をしていたそうなの・・・
父親は 似ても似つかない息子を憎悪したようで
服に隠れたところに 酷いあざが無数にあるのを 何度も父は見たそうよ
『だからあいつは 人間の感情が壊れてしまったんだ』
『だからあんなに人から好かれても 画家になる様な変人の僕しか
本当の友人はなかったんだ』って・・・・・・・・・」
(総司)「・・・・・・・・・・・・・・・・ ああ・・・!
それで早くに亡くなった祖父の話を 一族のだれもしないんだ・・・」
(志津音)「わたしは わからなくなってしまったわ・・・・・・
息子の美貌を憎んで折檻する親は
きっと幼い頃から 相当酷い目にあったんでしょう
その親は 彼を傷つけたかしら
その親は?
その親の親は・・・?
この家の苦しみの連鎖は いったいどこから始まったの・・・?」
涼子にふられた“ヘッド”は 怜司への襲撃を繰り返す
怜司をかばうものは 誰もいなかった
(怜司)
逃げまわって 沼の底を這いまわるような日々
疲れていって
もう どのくらい時間が経ったか分からなくなった頃 そんな頃だった
たった一晩だけのこと
憂さを晴らすような気持ちで
記憶もはっきり残っていない
(涼子)「気がついた? ずいぶん派手にやられたねぇ
キレイな顔がだいなしだよ
あのバカ あたしとあんたがやってるとか 思い込んでてほんとムカつく
・・・・・・・・・ ねぇ ムカつくから ほんとにやってやろうか」