彼氏彼女の事情 ACT93

あれから
名声と金を手に入れた
でも それになんの意味があるだろう
肉体の上をすべってゆくだけのもの
あの世へは持っていけない
持っていけるのは
淋しさを埋められない この魂ひとつ
それが 悲しい
この胸の痛みが
消せるわけじゃない

ホテルから眺める東京の冬空
(怜司)「雪か・・・・・・」
(スタッフ)「お嫌いですか?」
(怜司)「ああ いやなことばかり思い出す・・・」

学校の教室
(宮沢)「・・・そっか 色々あったんだね お父さん達にも」
(有馬)「うん 辛い話だったけど 聞いてよかった
 みんな どれほど倖せになろうと足掻いたのか分かったから
 完成した人間のように見えていた大人たちが 身近になった
 以前よりずっと好きになったよ

 不思議だよね 聞いたのは 嫉妬や愛憎 過ち 弱さ 迷い
 ひとの綺麗じゃない面なのに
 それはかえって 血の通った人間として 好意を抱かせるものだった
 生きる苦しみを知っている人は 魅力的だ
 辛さを超えて 僕の倖せを願ってくれた父さん達がいたことが 嬉しい
 だから僕は 自分の過去を『悪くない』って思うようになったよ」
(宮沢)「総一くん なんかオーラがサラっとしてる おとなびたかんじ!!?」
(有馬)「でも 過去を克服できたのは 雪野さんの力だよ
 雪野さんがいなければ こんな風に考えられなかった」

(宮沢)
・・・予期せぬ妊娠で 10代で父に?
繰り返す不幸の連鎖・・・??
子供できたこと 言いにくいなぁ・・・

夜の深みがさらに増そうとしている時間
人気のない 木々の多い道
(宮沢)「でもわたし 嬉しいな
 怜司さんは 自分を犠牲にして総一くんをすくったんだもん
 本当はいい人なんだね
 考えてること見せない人だから不安だったけど きっと心配いらないね
 バイクで総一くんを連れ去るとき わたしに言ったんだ

 『悪いようにはしない 必ず無事に返すから』

 その言葉は信じられると思ったの」
(有馬)「・・・怜司は なんのために僕に会いに来たんだろう・・・
 これっきり もう会うつもりないなんていって
 僕はこれからも怜司と会いたいし 父さんとだって もう和解できるのに・・・」
(宮沢)「?」
前から近づいてくる人影を見て驚く
(母・涼子)「・・・ずるいじゃない 自分だけ怜司と仲良くするなんて・・・
 あたしだって母親なのよ れえっ 怜司に会わせてよ
 久しぶりに家族でそろいましょ?」
(有馬)「知ってたって教えない よくそんな調子いいこと言えるよな」
左の頬をぶたれる
(母・涼子)「おまえの言い分なんか聞いちゃいねえんだよ
 自分ばかり特しやがって! いいから怜司に会わせなよ!」
もう一人が近づく
(父・怜司)「おい そいつから手 放してやれ」
(母・涼子)「怜司! 会いたかっ ぎゃあっ」
蹴飛ばされる
(父・怜司)「・・・やっぱりな
 事情が変わるたび 総一郎をつけまわすんだな・・・
 オレは しばらく前におまえが 総一郎を利用するために近づいたこと 知ってるんだよ
 そして思いがけず オレは名が売れ 外国でも知られはじめた
 だからためしたんだよ
 オレが総一郎とマスコミに出ても おまえが現れなければ
 おまえが今までしてきたことは許す
 もし また つけまわすようなことがあれば 決して許さないと

 総一郎さ―――
 これ ホントにオモチャだって信じたぁ?」
銃を取り出し 冷酷な眼差しで 銃口を涼子に向ける
(父・怜司)「日本へは こいつを殺しに来たんだよ」

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