はじめに
わたしはもともと宗教にうといほうであり、宗教に探く接する機会もなかった。今回、『般若心経』について書くにあたって、宗教にのめり込んだのかといわれても、そういうわけでない。神や仏がどうのこうの、また、信じる、信じないといったものでは決してない。
宗教学者・ひろさちや氏の文章をふとしたことから接する機会があり、そこに書かれている内容は、ものごとや自分、他人に対しての接し方・見方を、身じかでわかりやすい事例、ことばで仏教思想にのっとって書かれたものであった。「欲」はよくないもの、「執着・こだわり」はしてはならもの、と書かれていた。
つねに、今のわたしとは違うものの見方が紹介され、「仏教思想は人間性の向上に役立つ」とひそかに思いつづけていたが、深くは追及せず、少しかじりついた程度であった。学問としての仏教、つまり経・原典に接するのはこれが初めてである。仏教知識をほとんど蓄積していないわたしが、経を読んで研究して、その中身を説明することはとても難しい。
そこでこの論文では、この『般若心経』についての解釈とともに、そのなかでの中心的思想、「空」とはいったい何なのか、「空」とはどういうものの見方をせよと説いているのか、そしてそれがどのように「呪」に結びつくのかについて調べ、考えたい。
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